ブータンの首都ティンプーでのワークショップを実行するべく現地に滞在するアーティスト五十嵐靖晃と北澤潤の日記。

2011年3月30日水曜日

3日目 五十嵐靖晃

2011年3月27日(日)

 

「ブータンスタイル」

 今日は一日学校にいて、明日からスタートするワークショップの準備作業を行った。作業内容はSky Bedのサンプル制作である。

 8:00起床。ブータン滞在3日目。だいぶこっちの生活に慣れてきたような気がする。外国での滞在でまず壁になるのが食事である。エマ・ダツィという唐辛子とチーズでできた食べ物がブータンの人達のソウルフードであるように、ブータンでは多くの食べ物に唐辛子が使われている。ブータン人は唐辛子が好きである。最初は辛さに驚いていたものの、体の中に徐々に辛さに対する免疫ができたのか、数日の間に唐辛子を欲する体に変わってしまった。自らの身体の順応能力に驚く。ただし、朝のトイレが辛い。お尻が痛いのである。食事と排泄。辛さを2度味わっている。エマ・ダツィは子供も食べるのかと聞くと、6歳くらいから食べ始めるという。辛いには辛いのだが、これが美味しい。唐辛子とチーズを組み合わせた味は、食べるまではまったく想像できなかったが、癖になる味である。

 9:15学校へ。どこの国も同じだが日曜日の学校は静かで、且つ、あいにくの雨だったので人手が心配だったが、僕と潤以外に美術教師のワンガさん、彼が声がけしてくれた友人と美術に興味のある中学生くらいの学生達、ガイドのリンチェンさんもドライバーのキンレイさんも作業に加わり、総勢10名程度の人が集いSky Bedのサンプル制作を行った。  

 Sky Bedのつくりは竹で作った構造体に布を張るといったシンプルなものである。素材である竹は新校舎建築の資材として使っていた竹で、昨日の学校見学の際に山ほど積んであるのを発見し、その場ですぐに使用許可の確認をとっておいた。布やロープは昨日、町で購入しておいた。

 まずは作業場所づくり。置いてあった机や椅子を動かし広いスペースをつくる。次にやりたいことを図を見せながら話すと、皆でああだこうだと言いながら、竹を運んだり、切ったり、組んだりして作業は進み、お昼には竹の構造体ができあがった。上に張る布の縁に紐を通す金属の輪をとりつけて、構造体に貼付けて、サンプル完成。すぐに試乗実験を行う。潤が恐る恐る乗り込んだ次の瞬間、「あっ!」布が破けて笑いが起こる。しかし、これは問題だ。再び皆でああだこうだと言った結果、布を二重にして縁を縫うということで話がまとまった。最後に明日の作業で構造体が量産できるように材料の切り出しとパーツづくりをして一日の作業を終えた。

 実作業を通して、明日からのワークショップの参考になる発見があった。ガイドのリンチェンさんもドライバーのキンレイさんも含めて皆こういった作業は好きと言っていたが、明らかに盛り上がる瞬間と全然やる気のない瞬間とがある。これはいったいなんなのだろう。他には頑張っている人の横で、別に休んでいても構わないようで、それに対して特に腹を立てないように見える。来て少しして、何もせずに帰る人までいる。あと何かとお茶が好きで、休憩が好きである。そんな焦らずにのんびりと波を待つようなブータンのスタイル。

 明日からのワークショップもあまり決めすぎないでブータンスタイルでいこうと思う。

あまりタイトにスケジュールを組んだりしてもうまくいかないだろうし、逆にイライラしてしまうかもしれない。波が来れば確実に進む、ゆっくりのんびり遠回りでも、その目的までたどりつければよいのだ。

 夕方、ティンプーの町の時計台のある中央広場で人だかりに遭遇する。こんなにたくさんブータン人が集まっているのは、何事かと聞いてみると、宝くじの当選発表をしているという。日本と同じように事前にチケットを買う。ちょっと違うのは当たるのがお金ではなく。車やテレビといったもので、その商品が広場の中心に展示してありそれをぐるりと人が囲んでいる。それと雨のために延期になってしまったが、当選発表をする前に、日本の震災に対して義援金を送るイベントを行う予定だったと聞いた。仮に目の前でこのことに出会ったら、自分はブータンにいる日本人代表としてお礼をしに広場の真ん中までいこうと心に決めた。今やれることをやるしかない。

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