ブータンの首都ティンプーでのワークショップを実行するべく現地に滞在するアーティスト五十嵐靖晃と北澤潤の日記。

2011年3月30日水曜日

3日目 北澤潤

2011327

 

無理をお願いして、日曜日にも関らずDruk School にいれてもらった。

明日からはじまる《School of Sky》の準備をするためだ。

今日の作業は雲にみたてたベッドのサンプルづくりである。

 

新校舎の建築現場から竹をたくさんもらって、骨組みをつくる。

制作メンバーは、私と五十嵐さん、ガイドのリンチェン、運転手のキンレーさん、ワンガさんと最高学年13歳のタンディとの友達ふたりの計8人。

 

竹をクロスに組むために切り込みをいれ、縄で縛る。クロスに対して縦横に竹材を組むことで四角い竹の骨ができる。

デュパ(ゾンカ語でブータン人の意味)の作業の仕方は私にとって新鮮だ。おもしろいと同時にややこしい。手先はみんな器用で、縄を結ぶのなんてお手のもの。おそらく村仕事で経験がたくさんあるのだろう。早いしとても強く縛ることができる。ポイントは休憩のとり方だ。わりと短いスパンでお茶の時間がある。決まって温かく甘いミルクティーを飲むのだが、基本的にみんな一斉に休みお茶をしないといけない雰囲気がある。それだけならまだしも、竹を抑えながら縄を結ぶような何人かの手が必要な作業をしているのに、話をしてたりふざけていたりする。それなのにやるときはやるし早いし強い。指示出しの側としては、この作業の時間の使い方に対する文化の違いが最もむずかしい。私と五十嵐さんは昼食をとった折に二人とも思っていたであろうことをまとめた。「あんな感じだからゆっくりやろうか。」彼らに合わせる方向だった。

 

竹の骨の上面に白い布を張る。日本からもってきたハトメを付けて縄で張る。大人が1人寝転がっても余るくらいの白いハンモックのような浮遊感あるベッドを雲にみたててグラウンドに設置する。

 

サンプルができあがって、試しに私が寝てみる。ゆっくり布に横たわった瞬間、嫌な音がした。びりびりとハトメ周辺が破け落ちる。救出される私と笑い声。ワンガさんに布を二重にして縫い合わせるミシン作業を明日までにお願いした。

 

まずは雲をつくることをして、その場を活かした授業をグループに分かれて考える、そして最終日に発表するというスケジュールを組んでいる。今日サンプルをつくっておいたことは雲づくりの方法を確かめる上で大事だった。案の定、私の体重にはもたなかったのだから。

 

つたない英語でのプランの共有から、スピードにのって、でもお茶をのみながら、カタチになっていく。みんなカタチになればより伝わっていくようで、気持ちもあがってきている。追加の縄を購入して、3日間のワークショップに向けた準備は整った。明日に向けて寝ておこうと思うので日記は短めになるが、その分明日の内容が色濃くなることを期待する。

 

 

ひとつここで書いておきたいこと。

School of Sky は日本におきた震災と内容としては関連性を特に持っていない。

それは考え話し合った上での積極的な判断の結果だ。

 

私がこれまでおこなってきたいくつかの活動は、それぞれ現場となる地域に同居したからこそ可能なことばかりであり、ある意味その地域で完結する出来事をつくってきたといえる。

つまり、関わる地域それぞれに対して向き合う態度を重要視してきた私は、日本とブータンを軽やかに結びつける方法論はいま持ち合わせていなかった。というか、むしろ日本の現状をキーワードにしすぎることで、ブータンの人びと、特にDruk Schoolのみんなとのコミュニケーションに閉域ができてしまうのではないかという懸念がある。震災というキーワードによって復興支援の活動として彼らと関わるよりもできるだけまっすぐ彼らと関わることにしたい。だからまず明日、Druk Schoolという現場で考えられるできる限りの方法(=School of Sky)で場と人と関わってみようと思う。

そしてそのエネルギーをどう受け止めて持って帰るかをまた別で思案しようと思う。

もちろんラミネートしてきた日本の現状をつたえる写真を彼らに見せることから明日は始める。

 

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