ブータンの首都ティンプーでのワークショップを実行するべく現地に滞在するアーティスト五十嵐靖晃と北澤潤の日記。

2011年3月30日水曜日

5日目 五十嵐靖晃

2011年3月29日(火)

 

School of Sky 2日目」

 ワークショップ2日目。最高の天気に恵まれた。見上げると青空と雲がある。昨日、子供達が描いたイメージそのものの空の風景である。みんなが見たかった、行ってみたい空である。

 今日は、Sky Bedを完成させるために竹の構造体に布を張り付ける作業。Sky Bedの仮設置と試乗会。School of Skyの授業内容を考える話し合い。School of Skyの生徒を募集するための手作りちらしの制作と配布を行った。明日のSchool of Skyの開校に向けて、ほぼ準備は整った。

 昨日からスタートしたワークショップの作業を通して、子供達の性格や特徴が見えてきた。会話からはもちろんだが、それ以上に、物を運んだり、線を描いてみたり、色を塗ってみたり、紐を結んでみたりすると、会話ではわからない本人の本質的な性格が垣間見える。

 乱暴な振る舞いだけど小さく描く人。1人になっても最後まであきらめない人。何かをはじめると耳に声が届かない人。見かけによらず大胆に色を塗る人。繊細だけれど芯の強い人。飽きっぽいけど全体を見ている人。真面目そうに見えても細かいことは気にしない人。常に誰かに見ていてもらいたい人。自分のことより誰かの手伝いをしていたい人。

 本当にいろんな人がいるが、1つ思うのは、ブータンの子供達は自分に自信があるということだ。それぞれの行動に本人自らの意志を感じる。周りを気にしないというわけではないのだが、まず自分が楽しむということを優先している。そしてその楽しみ方の違いを互いに尊重している。なので、なかなか足並みは揃わないが、とてもユニークな人達である。それぞれ違うから良いのである。そのズレの間に魅力を見つけることができるのである。

 9:00学校に到着。活動の拠点となっている作業スペースで待っていると、ちらほらと子供達が集まってきた。昨日一日、一緒に時間を過ごして、その雰囲気はもう他人ではない。「クズサンポー」「サー」。「おはようございます」「サー」。「good morning」「sir」。いろんな挨拶が飛んでくる。この子供達の言葉の後にくっついている「sir(サー)」が昨日から気になっていた。  

 Druk schoolでは普段から英語でコミュニケーションをとっているので、いわゆる目上の人に対する敬称としての「sir(サー)」なのだが、なんでもかんでも言葉のお尻にや頭に「サー」がつくので、なんだか軍隊か何かにいるような気になってしまう。聞こえ方としては日本の子供達が「先生」「先生」と言っている感じだろうか。最初は「sir(サー)」など呼ばれても違和感を感じ、むずがゆいので抵抗していたが、「Igarashi(イガラシ)」は覚えづらく、ただ「sir(サー)」と呼ぶ方が都合がよいのだろう。圧倒的な「sir(サー)」の呼びかけの量に屈服し、抵抗すること諦め、認めざるを得ないこととなる。僕は今「sir(サー)」と呼ばれて振り返っている。

 まずはじめの作業は、最初にできあがったSky Bedをみんなで持ってグランドに運び入れる。「boys!」ワンガさんが声をかける。力仕事は男子の仕事と言わんばかりに呼びかけにすぐに反応して男子が集まって運び出す。女子は軽い布などを運ぶ。小学生なので当然女子の方が体は大きいのだが、男仕事は特別なもののようだ。男子と女子。その役割は良い意味で分かれている。

 次に残り4つのSky bedを完成させるべく、空を描いた布を張り付けていった。人手が余ったので、僕と数人はそのままSky bedの制作を進め、潤は新たな動きとして、同時進行で「School of sky」の生徒を募集するための手作りチラシづくりを満開の桃の木の下で行った。

 お昼前にはSky bedと手作りチラシが完成した。トリスンという名の1人の男の子がSky bedの布をつかんでバタバタさせ、「sir(サー)!風が吹いてる!」と僕に向かって叫んだ。その様子は、僕にはまるでブータンのあちこちにある旗、ルンタやダルシンと似た存在に思えた。

 Druk schoolの山にもいろんなところにルンタやダルシンがある。山は広いのに、なぜあの場所を選ぶのかと一昨日ワンガさんに話を聞いたことがあった。そのときワンガさんは「breath of earth」と教えてくれた。地球の息吹を感じる場所に設置しているのだ。それは風の通り道である。

 今日の空を切り取ったようなSky bedには地球の息吹が宿っている。それを風となって動かすのは我々である。

 Sky bedの試乗会をした後で、担当授業の内容についてミーティングし、最後にチラシを学校中に配布して今日のワークショップ終了。

 明日いよいよ「School of Sky」の開校を迎える。30/March/2011 pm2:00-3:00たった1時間だけの学校がはじまる。

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